「装置の制御はCプログラムで開発してきたが、開発者が不足していて新機能の追加が追いつかない」
「CODESYSを試してみたが、自社エンジニアには難しく、導入を断念した」
「以前、汎用PLCで装置を開発したところ、制御プログラムをそのままコピーされてしまった」

これらは、産業用装置を開発・製造するメーカから実際に聞かれる声です。特定の企業に限った話ではなく、制御部をマイコンやCプログラムで開発してきたメーカに共通する課題です。

フトウェアPLCとは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)の制御機能をソフトウェアとして実装し、マイコンや産業用PC上で動作させる技術です。専用ハードウェアが不要になるため、装置構成の自由度を高めながら、コスト削減や柔軟な開発を実現できます。特に装置メーカが自社マイコンボードやカスタムハードウェアに組み込む場合は、Windowsや産業用PC向けのソフトPLCではなく、Non-OS、RTOS、Linuxなどに対応した「組込み向けソフトウェアPLC」を選ぶことが重要です。

この記事では、C/C++資産を持つ装置メーカが、既存のC/C++プログラムを活かしながら、開発効率・保守性・知的財産保護を高めるために押さえておきたい、ソフトウェアPLCの選び方と具体的な解決策を解説します。

1.C/C++で装置制御を内製してきた装置メーカが抱える課題

装置メーカーの中には、長年にわたり自社の制御基板やマイコンボード上で、C/C++による制御プログラムを用いてきた企業が多くあります。これらの既存資産は、装置ごとの制御仕様や独自ノウハウが蓄積された重要な技術資産です。

一方で、近年ではラダーによる制御変更への対応、新機能の追加、保守担当者への引き継ぎなどを背景に、既存のC/C++資産をどのように活かしながら、開発効率や保守性を高めるかが課題になっています。

汎用PLCやPLC開発環境を活用する方法もありますが、導入には既存ハードウェアとの適合性、実行環境、開発体制、エンジニアのスキルセットなどを確認する必要があります。たとえばCODESYSのような開発環境は、機能が豊富で対応範囲も広い一方、導入にはPLC開発環境や実行環境に関する一定の知識が求められます。

そのため、既存のC/C++資産をできるだけ活かしながら、ラダーによる制御変更や現場での調整にも対応したい場合には、組込み向けソフトウェアPLCという選択肢があります。

2.ソフトウェアPLCとは?ハードPLCとの違いをわかりやすく解説

従来のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、三菱電機やオムロンなどが製造する専用ハードウェアとして、長年にわたり産業用装置や生産設備の制御に使われてきました。安定性と実績がある一方で、装置メーカにとってはいくつかの課題があります。

・機器コストが高く、装置の原価を押し上げる
・ハードウェアに仕様が縛られ、柔軟なカスタマイズが難しい
・メーカによってプログラミング言語・環境が異なり、技術者が分散する
・納期・価格・サポートがPLCメーカに依存される

これに対してソフトウェアPLCは、PLCの制御機能を専用ハードウェアではなく、ソフトウェアとして実装する仕組みです。PC、マイコン、SoCなどの上でPLC制御機能を動作させることで、専用PLC本体に依存しない制御システムを構成できます

これにより、装置メーカにとっては次のようなメリットがあります。

・コスト削減:高価なPLC本体が不要になり、制御機器の原価を下げやすくなる
・柔軟な開発:ハードウェアに縛られず、処理内容に応じた言語選択や機能追加がしやすくなる
・省スペース:装置内にPLCを別途設置する必要がなくなり、設計の自由度が高まる

つまり、ソフトウェアPLCは、PLCの制御機能をハードウェアから切り離し、装置構成や開発体制に合わせて制御システムを設計しやすくする仕組みです。

なお、ソフトウェアPLCの基本的な仕組みや導入メリットをより詳しく知りたい場合は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

ただし、ソフトウェアPLCであればどれでも装置メーカの組込み用途に適しているわけではありません。Windowsや産業用PC向けの製品もあれば、マイコンやRTOS環境への組込みを前提とした製品もあります。自社ボードやカスタムハードウェアで活用する場合は、まずこの違いを見極める必要があります。

3.装置メーカが見るべきは「組込み向けソフトウェアPLC」

ソフトウェアPLCには、大きく分けて「PC向け」と「組込み向け」の2つのタイプがあります。

PC向けソフトPLCは、主に産業用PCやWindowsマシン上で動作するタイプです。工場全体の制御や大規模システムでは、こうしたPC向けソフトPLCが適している場合があります。

一方で、装置メーカが自社設計の制御基板やマイコンボードにPLC機能を組み込む場合は、見るべきポイントが異なります。この場合に必要になるのは、Non-OS(OSなし)、RTOS、Linuxなどの実行環境に対応し、自社のハードウェア上で動作させられる「組込み向けソフトウェアPLC」です。

この違いを見落とすと、「ソフトウェアPLCを調べて製品を試したが、自社のマイコンボードでは使えなかった」という失敗につながります。

そのため、ソフトウェアPLCを選ぶ際に最初に確認すべきなのは、機能の多さではありません。自社のCPU、OS、開発環境で動作するかどうかです。さらに、既存のC/C++資産と連携できるか、現場で扱いやすい開発環境か、導入時の技術支援を受けられるかといった点も、実際の選定では重要になります。

4.組込み向けソフトウェアPLCを選ぶ4つの条件

では、組込み向けソフトウェアPLCを選ぶ際には、具体的にどの点を確認すればよいのでしょうか。ここでは、Cプログラムで制御部を開発してきた装置メーカが特に見ておきたい4つの条件を整理します。

条件①:C/C++資産をそのまま活かせること

長年Cプログラムで装置制御を開発してきたメーカには、既存のC言語資産が蓄積されています。これらをすべてラダーへ書き直すと、工数が大きくなるだけでなく、品質面のリスクも高まります。特に、複雑な演算処理や独自アルゴリズムまで無理にラダー化すると、かえって保守しにくくなる場合があります。

そのため、理想的なのは、役割を分けることです。複雑な演算処理や独自アルゴリズムは、C/C++で維持する。一方で、シーケンス制御や入出力管理など、現場で確認・変更する機会が多い部分はラダーで記述する。このように分担できれば、既存資産を活かしながら、現場でも扱いやすい制御開発へ移行しやすくなります。

ここで確認したいのは、単に「Cもラダーも使える」かどうかではありません。ラダープログラムからC/C++で作成した関数やライブラリを呼び出せるかどうかです。

たとえば、次のような構成を取れるかを確認しておくとよいでしょう。

ラダー(シーケンス制御・入出力管理)
      ↓ 外部関数として呼び出し
C/C++ライブラリ(独自アルゴリズム・ノウハウ部分)
      ↓
コンパイル済みバイナリとして組込み・秘匿

この構成により、シーケンス制御や入出力管理はラダーで整理し、独自アルゴリズムはC/C++ライブラリとして活用できます。既存C資産の活用と、自社ノウハウの保護を両立しやすくなる点が大きなメリットです。

条件②:国内PLCに近い使い勝手であること

新しい制御基盤を導入するとき、見落とされがちなのが現場の学習コストです。どれだけ高機能な製品でも、操作が難しく、特定の担当者しか使えない状態になってしまうと、結局また属人化してしまいます。特に、三菱電機やオムロンなどのPLCに慣れたエンジニアがいる場合は、国内PLCに近い操作感やラダー言語を利用できるかどうかが重要です。

IEC 61131-3に準拠した製品であれば、LD(ラダー)、FBD、STなどの標準的なPLC言語を利用できます。ただし、規格に対応していることと、実際に使いやすいことは同じではありません。画面の見やすさ、オンラインモニタのしやすさ、デバッグ時の操作感なども含めて確認しておくと安心です。現場で継続して使うためには、「機能」だけでなく「使い慣れやすさ」も重要です。

条件③:自社マイコンボードに組み込めること

装置メーカが自社設計のマイコンボードや制御基板を使っている場合、ソフトウェアPLCが対象CPUや実行環境に対応しているかどうかは、導入可否を左右します。たとえば、ルネサス製マイコン、ARM Cortex-M、Non-OS、FreeRTOS、Linuxなど、自社の環境に対する対応状況やポーティング実績を確認することが重要です。カタログ上の対応OSだけでなく、実際に近い構成で動作実績があるかも確認しておくと安心です。

また、自社ボードへの移植をベンダーが支援してくれるかどうかも、選定時のポイントになります。組込み開発では、製品仕様だけでなく、導入時の技術支援体制が成功率を大きく左右します。

条件④:自社技術を秘匿・保護できること

装置メーカにとって、制御ロジックは製品競争力そのものです。特に、独自の演算処理、動作制御、補正ロジックなどは、長年の開発で蓄積してきた重要なノウハウです。

そのため、ソフトウェアPLCを選ぶ際は、開発時の使いやすさだけでなく、納品後に制御ロジックがどのように扱われるかも確認しておく必要があります。ラダープログラムや設定情報が外部から容易に参照・複製できる構成では、自社のノウハウが流出するリスクが残ります。

特に確認したいのは、独自アルゴリズムや重要な制御処理を、コンパイル済みのライブラリやバイナリとして組み込めるかどうかです。現場で変更・確認する部分はラダーで扱いやすくしながら、制御の核心部分は外部から見えにくい形で保持できる構成であれば、開発効率と知的財産保護を両立しやすくなります。

また、納品先で閲覧できる範囲、プログラムのコピー可否、保守時の権限管理なども確認しておくと安心です。単に「動く」だけでなく、装置メーカとして守るべき技術をどこまで保護できるかが、製品選定の重要な判断基準になります。

最後:PoCで実機適合性を確認する

4つの条件を確認したうえで、本採用の前には小規模なPoCを行い、実機での適合性を確認することが重要です。仕様上は対応しているように見えても、実際に動かすと、タイマー割り込み、メモリマップ、サイクルタイム、I/O処理などで問題が見つかることがあります。

PoCでは、自社マイコンボード上でビルド・動作できるか、ラダーからC/C++で作成した関数を意図通りに呼び出せるか、リアルタイム性能が制御要件を満たしているかを確認します。あわせて、デバッグやモニタリング環境が実用的に使えるか、量産時に近い構成で運用できるかも見ておくと安心です。

また、PoCの段階からベンダーに技術サポートを依頼できるかどうかも重要です。「ツールは提供するが、移植や評価は自社で対応する必要がある」ベンダーと、「PoC段階から伴走する」ベンダーでは、導入の進めやすさに大きな差が出ます。

組込み向けソフトウェアPLCは、単にソフトウェアをインストールすれば使える製品ではありません。自社のハードウェア、既存C/C++資産、量産時の運用まで含めて適合性を確認することで、導入後の手戻りを防ぎやすくなります。

5.組込み向けソフトウェアPLC導入で起こりやすい失敗例と対策

組込み向けソフトウェアPLCの導入では、製品の機能だけを見て選定すると、実際の開発環境や運用条件に合わず、後から手戻りが発生することがあります。ここでは、実際の導入検討で起こりやすい失敗例と、その対策を紹介します。

失敗例① C言語をPLC言語に一本化した結果、言語特性の違いで移植工数が膨大化

既存のC/C++資産を整理する目的で、「今後はすべてPLC言語に統一する」という方針を取るケースがあります。しかし、長年C/C++で実装してきた独自アルゴリズム、数値演算、補正処理、データ処理までラダーへ置き換えようとすると、想定以上の移植工数が発生することがあります。

特に、C/C++では関数化・ライブラリ化されていた処理も、ラダーで同じように表現しようとすると可読性が下がったり、デバッグが難しくなったりする場合があります。その結果、開発効率を高めるはずが、かえって保守性を下げてしまうことがあります。

対策:すべてをPLC言語へ置き換えるのではなく、C/C++で残す部分とPLC言語で記述する部分を事前に分けておくことが重要です。複雑な演算処理や独自ノウハウはC/C++ライブラリとして維持し、シーケンス制御やI/O管理など、現場で確認・変更する機会が多い部分をラダーで整理する構成を検討します。

失敗例② ラダーで扱う範囲とC/C++で秘匿する範囲を決めずに導入した結果、保守性と知財保護の両立が難しくなった

ソフトウェアPLCを導入する際、どの処理をラダーで見えるようにし、どの処理をC/C++ライブラリとして秘匿するかを決めないまま開発を進めると、運用段階で問題が発生することがあります。たとえば、現場で調整したいシーケンス処理までC/C++側に残してしまうと、簡単な仕様変更でもC/C++開発者の対応が必要になります。一方で、装置メーカ独自の制御ノウハウまでラダー側に記述してしまうと、納品後にプログラムの閲覧・コピーによる知財流出リスクが残ります。

対策:導入前に、ラダーで扱う範囲とC/C++で保持する範囲を明確にしておくことが重要です。現場で確認・変更する可能性が高い処理はラダーへ、競争力の源泉となる独自アルゴリズムや補正ロジックはC/C++ライブラリへ分けることで、保守性と知的財産保護を両立しやすくなります。

6.よくある質問

Q:既存のC言語資産はどこまで活かせますか?

製品の連携方式によって異なります。ラダーからC/C++で作成した関数やライブラリを呼び出せる製品であれば、既存のC言語資産を活用しやすくなります。すべての制御ロジックをラダーへ書き直すのではなく、シーケンス制御や入出力管理はラダーで記述し、独自ロジックや複雑な演算処理はC/C++で維持する、といった役割分担が可能です。

Q:Non-OS(OSなし)環境でも本当に動作しますか?

製品によります。WindowsやLinux上での動作を前提としたPC向けソフトPLCは、Non-OS環境では動作しません。一方、組込み向けに設計されたソフトウェアPLCであれば、Non-OS環境やRTOS上での動作に対応しているものがあります。導入前には、自社で使用しているCPU、OSの有無、RTOSの種類、割り込み処理、メモリ制約などを整理し、ベンダーに対応可否やポーティング実績を確認することが大切です。

Q:CODESYSと組込み向けソフトウェアPLCの違いは何ですか?

CODESYSは、IEC 61131-3に対応した代表的なソフトウェアPLC開発環境の一つです。機能が豊富で、さまざまな用途に利用できます。
一方で、装置メーカが自社設計のマイコンボードやNon-OS環境に組込みたい場合は、対象CPUや実行環境への対応、ポーティング支援、C/C++資産との連携方式を個別に確認する必要があります。

Q:導入から運用まで、どれくらいの期間がかかりますか?

PoCから本採用、量産対応までの期間は、装置構成や自社ボードへのポーティング有無によって異なります。一般的には、まず自社環境での動作確認、C/C++資産との連携検証、リアルタイム性能の確認を行い、その結果をもとに本採用を判断します。特に自社設計のマイコンボードに組み込む場合は、標準環境での評価だけでなく、実機に近い構成でPoCを行うことが重要です。

7.組込み向けソフトウェアPLCの代表例:INTALOGIC5

INTALOGIC5は、IEC 61131-3準拠の組込み向けソフトウェアPLCです。Non-OSからLinuxまで幅広いプラットフォームに対応し、実際の量産製品に多数採用されています。本製品は、従来製品(INTALOGIC)の後継として開発された現行の主力製品です。装置メーカ向けに設計された組込み型ソフトウェアPLCであり、以下のような特長を備えています。

✓ マイコン/SoCへの組込みに対応

 IEC61131-3による制御記述

✓ C/C++で作成した関数をラダーから直接呼び出し

✓ 試作から量産まで同一構成で展開可能

ソフトウェアPLCは、制御をソフトウェアとして設計するための有力な選択肢です。装置構成や制御規模によって適用可否は異なるため、導入にあたっては事前の技術的検討が重要になります。求められる性能や将来的な量産展開までを見据えたうえで、最適な構成を選定することが求められます。

INTALOGIC5では、試作・評価段階から量産を見据えた技術検討まで一貫して対応しています。装置メーカの開発プロセスに寄り添いながら、制御設計の最適化を支援します。

8.まとめ

Cプログラム開発者の不足、CODESYS導入の難しさ、汎用PLCによる知財流出リスクは、制御部を内製してきた装置メーカが直面しやすい課題です。ただし、解決策は「Cをやめること」ではありません。既存のC資産を活かしながら、シーケンス制御や入出力管理をPLC言語で整理し、開発効率・保守性・知的財産保護を高めることが重要です。

そのためには、自社のCPU、OS、既存C資産、量産時の運用条件を整理したうえで、実機に近い環境で技術的な適合性を確認する必要があります。組込み向けソフトウェアPLCは、Cで培ってきた制御ノウハウを活かしながら、開発体制を見直すための選択肢になります。

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ソフトウェアPLCで装置構成を見直したい方へ

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