
ILC テクニカルセンターブログ編集部
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製造現場では、設備停止や突発的なトラブルが発生しても、原因をすぐに特定できないケースがあります。PLCのエラー履歴やアラーム履歴を確認すれば、「いつ異常が発生したか」「どの信号が出力されたか」は把握できます。しかし、ワークがどのように詰まったのか、作業者がどのように復旧対応を行ったのか、また異常発生の直前にどのような動きがあったのかまでは、ログだけでは判断が難しい場合があります。
設備トラブルの原因究明には、PLCログや設備データに加えて、現場の状況を後から確認できる映像記録を活用することが有効です。映像とログを照らし合わせることで、異常発生時の設備動作や作業者の対応を時系列で確認でき、原因調査の精度と効率を高めることができます。
本記事では、設備トラブルの主な原因、調査の進め方、そしてPLCログと映像記録を組み合わせて原因究明を効率化する方法について解説します。
1.設備トラブルとは?

設備トラブルとは、生産設備が正常に動作せず、生産に支障が出る状態を指します。設備が完全に故障して停止するケースだけでなく、短時間で復旧する一時的な停止や、ワーク詰まり、センサー異常、作業者の復旧対応によって解消される不具合なども、設備トラブルに含まれます。
代表的な設備トラブルには、次のようなものがあります。
| トラブルの種類 | 例 |
| 設備停止 | アラーム発生、非常停止、異常停止 |
| 突発停止 | 原因不明の停止、一時的な停止 |
| ワーク詰まり | 搬送不良、供給ミス、排出不良 |
| センサー異常 | 検出ミス、ON/OFFのタイミングずれ |
| 動作不良 | シリンダー、モーター、搬送機構の動作不良 |
| 作業起因のトラブル | 投入ミス、復旧手順のばらつき |
| 繰り返し発生する軽微な停止 | チョコ停、短時間停止 |
特に、短時間だけ設備が停止する「チョコ停」は、1回あたりの停止時間は短くても、繰り返し発生すると生産効率を大きく低下させます。また、チョコ停は作業者がすぐに復旧することも多く、保全担当者が現場に到着した時点では、すでにワークの状態や設備周辺の状況が変わっている場合があります。そのため、発生時の状況を後から確認できる記録が重要になります。
チョコ停発生時の映像記録については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
2.設備トラブルの原因究明が難しい理由

設備トラブルの原因究明が難しいのは、単に「設備が止まった」という情報だけでは、現場で実際に何が起きていたのかを判断しにくいためです。設備が停止した時刻やアラームの内容は確認できても、ワークの状態、作業者の対応、異常発生直前の動きまでは、その場にいなければ把握できないことがあります。ここでは、設備トラブルの原因究明が難しくなりやすい主な理由を紹介します。
現場確認時にはすでに復旧している
設備の一時停止やワーク詰まりは、作業者がすぐに復旧することがあります。そのため、保全担当者や生産技術担当者が現場に到着した時点では、すでにワークの位置や設備周辺の状況が変わってしまっている場合があります。
このような場合、現場で確認できる情報が限られるため、作業者への聞き取りや過去の経験をもとに原因を推測することになります。
PLCログだけでは現場の状況がわからない
PLCログやアラーム履歴を確認すれば、異常信号が発生した時刻や停止した設備は把握できます。しかし、ログだけでは、ワークがどのように詰まっていたのか、異常発生の直前にどのような動きがあったのか、作業者がどのように復旧操作を行ったのかまでは判断できない場合があります。
つまり、PLCログは設備側の状態を確認するうえでは有効ですが、現場で実際に起きていた状況を把握するには情報が不足することがあります。
作業者の記憶に頼ると原因が曖昧になりやすい
設備トラブルが発生した際、現場では作業者に状況を聞き取ることがよくあります。もちろん、作業者からの情報は原因調査において重要です。一方で、トラブル発生時は復旧作業が優先されるため、細かい発生状況までは記憶に残っていないこともあります。たとえば、次のような曖昧な情報だけでは、原因を正確に特定することが難しくなります。
・「たぶんワークが詰まっていた」
・「いつもと少し動きが違った気がする」
・「気づいたらアラームが出ていた」
このような状態では、再発防止策を具体的に検討しにくくなります。
再現性が低いトラブルは調査に時間がかかる
設備トラブルの中には、毎回同じ条件で発生しないものもあります。再現性が低いトラブルの場合、現場で再現確認をしようとしても、なかなか同じ現象が発生しません。その結果、原因調査に時間がかかり、対策が後回しになってしまうことがあります。特に、発生頻度は低くても生産への影響が大きいトラブルでは、発生時の状況をできるだけ正確に記録しておくことが重要です。
3.設備トラブルの原因を調査する基本手順
設備トラブルの原因究明では、発生した事象を順番に整理し、設備側・ワーク側・作業側のどこに原因があるのかを切り分けていくことが重要です。ここでは、原因調査を進める際の基本的な流れを紹介します。
①発生時刻と発生箇所を確認する
まずは、いつ・どの設備で・どの工程でトラブルが発生したのかを確認します。発生時刻や発生箇所が曖昧なままだと、PLCログやアラーム履歴、作業者の報告と照合しにくくなります。確認すべき項目は次の通りです。
・発生日時
・対象設備
・停止時間
・復旧にかかった時間
・同じ現象の発生頻度
②PLCログやアラーム履歴を確認する
次に、PLCログやアラーム履歴を確認します。異常信号、停止信号、センサーの状態、アラーム内容などを確認することで、設備側でどのような異常が発生していたのかを把握できます。ただし、ログだけで原因を決めつけるのではなく、現場の状況と合わせて確認することが重要です。
③現場の状況を確認する
PLCログを確認した後は、現場の状況を確認します。たとえば、ワークが詰まりやすい箇所、搬送部や投入部の状態、センサーの位置ずれや汚れ、作業者の復旧操作などを確認します。設備だけでなく、ワーク、作業、周辺環境も含めて確認することで、原因を切り分けやすくなります。
④原因を分類する
設備トラブルの原因は、1つとは限りません。複数の要因が重なって発生している場合もあります。原因を整理する際は、設備の問題、ワーク側の問題、制御側の問題、作業側の問題、環境の問題などに分類すると、対策の方向性を検討しやすくなります。
| 分類 | 具体例 |
| 設備側の原因 | 部品の摩耗、位置ずれ、機械的なガタ、センサー不良 |
| ワーク側の原因 | 形状ばらつき、供給不良、詰まり、姿勢不良 |
| 制御側の原因 | PLC設定、信号タイミング、インターロック条件 |
| 作業側の原因 | 投入ミス、復旧手順のばらつき、確認漏れ |
| 環境側の原因 | 温度、湿度、粉じん、振動、照明条件 |
⑤再発防止策を決める
原因をある程度特定できたら、再発防止策を検討します。たとえば、センサー位置の調整、ワークガイドの改善、搬送部の清掃・点検周期の見直し、PLC制御条件の変更、作業手順の見直しなどが考えられます。重要なのは、原因を曖昧なままにせず、確認した事実にもとづいて対策を決めることです。
4.PLCログだけでは把握しきれない現場の状況
設備トラブルの原因調査では、PLCログやアラーム履歴が重要な手がかりになります。PLCログを確認することで、異常信号が発生した時刻や、どの設備が停止したのか、どのセンサーが反応したのかといった設備側の状態を把握できます。
一方で、PLCログだけでは、現場で実際に何が起きていたのかまでは判断しにくい場合があります。たとえば、同じ「センサー未検出」というログが残っていても、実際にはワークが斜めに入っていた、ワークが重なっていた、搬送タイミングがずれていた、作業者が手で位置を直していたなど、現場側ではさまざまな状況が考えられます。
また、PLCログでは復旧ボタンが押された時刻や設備が再起動した時刻を確認できても、その前後で作業者がどのような対応をしたのかまではわかりません。設備トラブルの原因は、停止した瞬間ではなく、その数秒前に起きていることもあります。搬送中のワーク姿勢が少しずつ崩れていた、前工程からの供給タイミングが遅れていた、作業者が直前に何らかの操作をしていた、といったケースでは、ログだけで原因を特定することは難しくなります。
そのため、PLCログで設備側の状態を確認するだけでなく、異常発生時の現場状況をあわせて確認できる仕組みが重要になります。
5.映像記録を組み合わせて原因を確認する

このような場合に有効なのが、PLCログと映像記録の組み合わせです。ここでいう映像記録は、防犯目的の監視カメラではなく、設備トラブルが発生したときに、現場で何が起きていたのかを後から確認するための記録です。
設備停止や異常信号をきっかけに、異常発生前後の映像を記録できれば、PLCログだけではわからない現場の状況を確認しやすくなります。たとえば、異常発生の直前にワークの姿勢が崩れていなかったか、搬送部で詰まりが起きていなかったか、センサー付近で検出ミスが起きていなかったか、作業者がどのように復旧作業を行ったかなどを、後から確認できます。
PLCログと映像を照合することで、異常信号が出た時刻と、その瞬間の現場映像を合わせて確認できます。これにより、単に「異常信号が出た」という情報だけでなく、「そのとき現場で何が起きていたのか」を把握しやすくなります。
また、映像があれば、保全担当者、生産技術担当者、現場担当者、設備メーカーなど、関係者が同じ状況を見ながら原因を確認できます。口頭説明だけでは伝わりにくい現場の状況も共有しやすくなり、認識のズレを減らせます。
発生状況が明確になると、再発防止策も具体的に検討しやすくなります。たとえば、ワークの姿勢が崩れていることがわかればガイドの改善、作業者の復旧手順にばらつきがあれば手順書の見直し、センサー検出のタイミングが問題であれば制御条件の調整といった対策につなげやすくなります。
6.映像記録を導入する流れ

設備トラブルの原因究明に映像記録を活用する場合は、まず停止頻度が高い設備や、原因調査に時間がかかっている設備から検討するとよいでしょう。稼働・停止の状態、停止理由、発生頻度、停止時間などを確認し、どの設備で映像記録を活用すべきかを整理します。そのうえで、記録する信号や撮影箇所、映像を残す時間、確認・分析の運用ルールを決めていきます。
①トラブルが多い設備を選ぶ
まずは、停止頻度が高い設備や、原因調査に時間がかかっている設備を選びます。すべての設備を対象にするのではなく、改善効果が見込める設備から始めることで、導入効果を確認しやすくなります。
②記録したい信号を決める
次に、どの信号をきっかけに映像を記録するかを決めます。たとえば、PLCの異常信号や設備停止信号をトリガーにして映像を記録することで、異常発生時の前後映像を確認しやすくなります。記録のきっかけにする信号は、設備構成や調査したいトラブルによって異なります。設備停止信号、異常信号、アラーム信号、センサー異常、非常停止、特定工程の完了信号などを確認しながら検討します。
③撮影したい箇所を決める
カメラを設置する場合は、原因究明に必要な箇所が映る位置を選びます。たとえば、ワークが詰まりやすい箇所、搬送部、投入部、排出部、センサー周辺、作業者が復旧操作を行う場所などが候補になります。重要なのは、ただ広く撮影することではなく、原因究明に必要な情報が映るようにすることです。
④映像を残す時間を決める
設備トラブルの原因は、停止した瞬間だけでなく、その前後に隠れていることがあります。そのため、異常発生の前後何秒を記録するかを検討します。異常発生の数秒前から復旧後まで確認できれば、トラブルの流れを把握しやすくなります。
⑤確認・分析の運用を決める
映像を記録するだけでは、原因究明にはつながりません。記録した映像を誰が確認するのか、どのように原因を記録するのか、再発防止策にどうつなげるのかを決めておく必要があります。たとえば、トラブル発生時には保全担当者がPLCログと映像を確認し、原因分類と対策案を記録する、といった運用ルールを決めておくとよいでしょう。
※導入時の注意点
映像記録を設備トラブル対策に活用する際は、目的や運用ルールを明確にしておくことが重要です。ここでいう映像記録は、防犯や作業者の監視を目的としたものではなく、設備停止や異常発生時に現場で何が起きていたのかを確認し、原因究明と再発防止に活用するためのものです。
そのため、撮影範囲は原因調査に必要な場所に絞り、ワークの詰まりやセンサー異常、復旧操作などを確認できる位置を検討します。また、常時監視ではなく、設備停止や異常信号など、必要なタイミングで映像を確認できる仕組みにすることで、確認作業の負担も抑えやすくなります。
作業者が映る場合は、映像の利用目的、閲覧できる人、保存期間などを社内で整理しておく必要があります。原因究明や再発防止のために使用することを明確にし、必要以上に映像を利用しない運用にすることで、現場の理解も得やすくなります。
7.よくある質問
Q:設備トラブルの原因究明では何を確認すべきですか?
まずは、発生時刻、発生箇所、停止時間、アラーム内容、PLCログ、現場の状況を確認します。あわせて、作業者がどのように復旧対応を行ったのか、同じトラブルが過去にも発生していないかを確認すると、原因を整理しやすくなります。
Q:PLCログだけで設備停止の原因はわかりますか?
PLCログからは、異常信号や停止時刻、センサーの状態などを確認できます。ただし、ワークの詰まり方や作業者の対応、異常発生直前の現場状況までは判断しにくい場合があります。そのため、必要に応じて映像記録と組み合わせて確認することが有効です。
Q:どのような設備で映像記録を活用すべきですか?
原因不明の停止が多い設備、再現性の低いトラブルが発生する設備、短時間停止が繰り返し発生している設備などで活用しやすいです。特に、PLCログやアラーム履歴だけでは原因を特定しにくい場合は、映像記録が原因調査の手がかりになります。
Q:どの設備から始めるべきですか?
まずは、停止頻度が高い設備や、原因調査に時間がかかっている設備から始めるとよいでしょう。最初から全ラインに導入するのではなく、1設備・1ラインで効果を確認してから展開することで、導入の負担を抑えやすくなります。
Q:チョコ停対策にも使えますか?
はい、使えます。チョコ停は短時間で復旧することが多く、発生時の状況が残りにくいトラブルです。異常発生前後の映像を残すことで、ワーク詰まりや復旧操作などを後から確認しやすくなります。
8.まとめ
設備トラブルの原因究明では、発生時刻やアラーム内容を確認するだけでなく、現場で実際に何が起きていたのかを把握することが重要です。PLCログは設備側の状態を確認するうえで有効ですが、ワークの詰まり方や作業者の復旧対応、異常発生直前の動きまでは判断しにくい場合があります。
PLCログと映像記録を組み合わせることで、異常発生時の状況を時系列で確認しやすくなり、原因の切り分けや再発防止策の検討につなげやすくなります。原因不明の停止やチョコ停が繰り返し発生している場合は、まずは停止頻度が高い設備から映像記録の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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設備の異常信号と映像記録を組み合わせた原因究明の仕組みを検討したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
